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40代子育て世帯が知っておくべき資産運用のメンテナンス術:リバランスの重要性と実践方法

Tags: 資産運用, リバランス, 家計管理, 教育費, 老後資金

はじめに

40代の子育て世帯において、将来に向けた資金準備は重要な課題です。特に教育費の増加や老後資金への備えとして、資産運用に取り組んでいる方も少なくありません。つみたてNISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用し、毎月コツコツと積立投資を行っている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、資産運用は「始めて投資信託などを購入したら終わり」というものではありません。長期にわたって運用を続ける上で、適切に「メンテナンス」を行うことが、目標達成の可能性を高めるために不可欠です。このメンテナンスの中でも特に重要なのが、「リバランス」と呼ばれる作業です。

本記事では、40代子育て世帯の資産運用におけるリバランスの重要性と、具体的な実践方法について解説します。日々の忙しさの中で資産運用に時間をかけられないという方にも、無理なく取り入れられるリバランスの考え方をお伝えします。

資産運用におけるリバランスとは

リバランスとは、運用している資産ポートフォリオの「資産配分」を、当初設定した目標の比率に戻す作業のことです。例えば、「国内株式50%、先進国株式50%」という目標で運用を開始したとします。時間が経つにつれて、それぞれの市場の値動きによって、実際の資産配分は目標からずれていきます。

仮に先進国株式市場が大きく上昇した場合、先進国株式の評価額が増え、ポートフォリオ全体に占める先進国株式の割合が50%を超え、国内株式の割合が50%を下回る、という状態になります。リバランスは、このように変動によってずれてしまった資産配分を、再び「国内株式50%、先進国株式50%」という当初の目標比率に戻すことを指します。

なぜ40代子育て世帯にリバランスが必要なのか

40代の子育て世帯が、教育費や老後資金といった特定のライフイベント資金や長期的な目標のために資産運用を行う場合、自身の「リスク許容度」に基づいた適切な資産配分を設定することが非常に重要です。この資産配分は、期待されるリターンと許容できるリスクのバランスを示すものであり、目標達成に向けた運用戦略の土台となります。

しかし、市場の変動によって資産配分がずれてしまうと、当初想定していたリスク・リターンのバランスが崩れてしまう可能性があります。例えば、価格が大きく上昇した資産の割合が増えると、ポートフォリオ全体のリスクが高まる傾向があります。逆に、下落した資産の割合が増えることで、回復が遅れる可能性も考えられます。

教育費の支出時期が迫っている、あるいは老後までの時間が限られているなど、時間軸を意識した資金準備において、リスクを適切にコントロールし、目標とする資産形成の軌道から大きく外れないようにするために、定期的なリバランスが必要となるのです。

リバランスの具体的な方法

リバランスを行う方法としては、主に以下の2つが考えられます。

方法1:定期的に行うリバランス

これは、あらかじめ決めたタイミングで、資産配分を目標比率に戻す方法です。例えば、「半年に一度」「一年に一度」といったように、時期を固定して行います。

この方法が最もシンプルで、多忙な40代子育て世帯でも比較的容易に実践しやすいでしょう。多くの資産運用機関やアドバイザーが推奨する方法の一つです。

方法2:乖離率を見て行うリバランス

これは、個別の資産クラスの比率が、目標とする比率から一定以上乖離した場合にリバランスを行う方法です。例えば、「目標比率から5%または10%以上ずれたら行う」といったルールを設定します。

この方法は、市場の動きをある程度追える方や、より機動的にポートフォリオを管理したい方向けと言えます。

具体的な実践ステップ(定期的なリバランスの場合)

  1. リバランスを行う日を決める: 毎年〇月や〇月〇日、といったように具体的な日付を設定します。
  2. 現在の資産配分を確認する: 保有している投資信託などの評価額を確認し、各資産クラスがポートフォリオ全体に占める割合を計算します。
  3. 目標の資産配分と比較する: 事前に決めておいた目標の資産配分と、現在の配分を比較します。
  4. 乖離を調整する: 目標比率に対して割合が増えすぎている資産を一部売却し、割合が減りすぎている資産を買い増す、あるいは新規の積立資金を割合が減っている資産に重点的に投入するなどして、目標の比率に近づけます。

多くの場合、新規の積立資金を割合が減っている資産に充当する方法(「積立リバランス」とも呼ばれます)であれば、売却益に対する税金を気にすることなく、比較的簡単にリバランスを行うことができます。

リバランス実践上のポイント

税金と手数料

資産を売却してリバランスを行う場合、もし売却益が発生していれば、原則としてその利益に対して税金がかかります。非課税制度であるつみたてNISAやつみたて投資枠、iDeCoなどの枠内で運用している資産であれば、売却益に税金はかかりません。これらの非課税制度を優先的に活用することで、税負担を抑えながら効率的にリバランスを行うことが可能です。また、売買には手数料が発生する場合もありますので、事前に確認しておくことが大切です。

非課税制度(つみたてNISA・iDeCo)内でのリバランス

つみたてNISAやつみたて投資枠の場合、売却して得た資金を再度非課税枠内で投資することはできません(年間投資枠とは別に管理されます)。そのため、売却を伴うリバランスを行う際は、非課税枠を最大限に活用できているかどうかも考慮に入れると良いでしょう。新規の積立設定額を調整して、割合が減った資産クラスへの積立額を増やすといった「積立リバランス」は、非課税枠を有効に使いながらリバランスを行う有効な手段の一つです。iDeCoの場合は「スイッチング」と呼ばれる運用商品の預け替え機能を使うことで、非課税のままポートフォリオの構成比率を変更することができます。

多すぎる頻度や少なすぎる頻度

リバランスは重要ですが、頻繁に行いすぎる必要はありません。あまりに頻繁に行うと、手数料がかさむ可能性や、市場の値動きに振り回されて短期的な視点になりすぎる可能性があります。逆に、長期間リバランスを行わないでいると、資産配分が大きくずれ、リスクコントロールが難しくなることがあります。前述の通り、多くの場合、半年に一度または一年に一度程度の定期的なリバランスで十分な効果が得られるとされています。自身の運用スタイルや許容できる手間を考慮して、適切な頻度を設定することが推奨されます。

まとめ

40代子育て世帯が教育費や老後資金といった長期的な目標のために資産運用を行う際、リバランスはポートフォリオを適切な状態に保ち、目標達成の可能性を高めるために不可欠なメンテナンスです。

リバランスは、市場の変動によってずれた資産配分を当初の目標に戻す作業であり、これによりリスクをコントロールし、期待されるリターンを維持することを目指します。定期的な実施や乖離率に基づいた実施など、いくつかの方法がありますが、ご自身の状況に合わせて無理なく続けられる方法を選択することが重要です。

特に非課税制度を活用した運用においては、税負担を抑えながら効率的にリバランスを行う工夫が可能です。

資産運用は一度始めれば終わりではありません。計画的なリバランスを通じて、設定した目標に向けた確実な一歩を踏み出し続けていただきたいと思います。